おでん教室
紀文 おでんの具 食感実験
静岡県水産試験場勤務を得て現海洋学部教授。水産物の付加価値向上、水産物の新しい利用技術の開発をテーマとして、製造実験と成分分析等の品質評価などの実践的な研究を行う。
2010年入社、横浜工場で現場を経験し2011年より研究開発部にてすり身の基礎研究を行う。大学時代から現在まで一貫して練りものの研究に携わり、おでんの食べ歩きも大好き。
具(たね)の食感などのテクスチャー(物性的性質)は、物性測定装置で「破断強度」と「破断距離」を測定することによって調べることができます。おでんは、具(たね)によってテクスチャーが異なり、様ざまな食感を楽しむことができます。
食感を測定する方法
代表的な具(たね)15品について、おでん汁(つゆ)で45分加熱し、品温約60℃で物性(「破断強度」「破断距離」)を測定しました。
縦軸の「破断強度」は硬さ(硬い、軟らかい)を、横軸はプランジャーの「移動距離」を示し破断点までの移動距離が「破断距離」でしなやさか(しなやか、もろい)を意味します。
物性測定チャート図

測定条件
●測定機器:山電株式会社 TPU-2L
●プランジャー(食品を破断するのに用いる治具):くさび型:10mm
●プランジャー進入速度:2.5mm/sec:(等速)
●クリアランス:10㎜
●測定温度:約60℃
●測定年月:2020年10月
●測定機関:東海大学 海洋学部 水産加工研究室
おでんの食感調査
おでんの具(たね)は主に、(1)練りもの類(白はんぺん、ちくわ、さつま揚、つみれ)、(2)海藻類(昆布)、(3)野菜、(大根)、(4)大豆、穀類の加工品(ちくわぶ、もち入り巾着、厚揚げ)、(5)いも類加工品(白滝、こんにゃく)、(6)畜肉およびその加工品類(牛すじ、ウインナー)、(6)鶏卵類などに類別され、様ざまな食材から構成されています。
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厚揚げ
徐々に破断強度は上昇しており、最大で100g程度と軟らかくソフトな食感。カーブはスムーズに描かれていることから、なめらかな食感でザラ感はなかった。
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ウインナー
急激に破断強度が上昇して高い値を示し、シャープな破断点が確認された。ウインナーの皮のパリッとした食感と中の豚肉の弾力が表れていた。
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魚河岸あげ®
徐々に破断強度は上昇しており、200gを超えず軟らかくソフトな食感。カーブがスムーズに描かれており、魚河岸あげ®の白身魚のすり身と豆腐を混ぜ合わせたふわふわでなめらかな食感の特徴が出ていて、厚揚げのカーブに似ていた。
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牛すじ
破断強度は急激に上昇し、明確な破断点がみられ、牛すじ特有のコリッとした食感が残っていた。
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こんにゃく
徐々に破断強度が上昇し、明確な破断点を示しており、破断点以降にも微小な破断ピークを多数有し、こんにゃく特有の弾力と歯切れの良さが出ていた。
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さつま揚
徐々に破断強度が上昇し、240g程度で横ばいとなり微小な破断点が複数確認された。煮込んだ後なので軟らかいが、魚肉特有の歯ごたえのある食感も残っていた。
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白はんぺん
破断強度は緩やかに上昇し、200gを超えずに低値を示してふんわりとして軟らかく、歯切れの良い食感であった。
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大根
破断強度は上昇後に200g程度で横ばいとなり、多数の破断ピークを有しており、繊維を切断する食感が表現されていた。大根の芯まで煮込まれ軟らかい食感であった。
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玉子
徐々に破断強度が上昇。明確な破断点を有しており、白身部分はプリプリした弾力のある食感、黄身の部分はピークがなく軟らかい食感であった。
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ちくわぶ
緩やかに破断強度は上昇していて軟らかいが、約600gと高く後半で2回目の破断点を示しており、ちくわぶ特有のもちもちねっとりした食感と筒形状の特徴が表れていた。
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つみれ
徐々に破断強度が上昇した後、横ばいとなり複数回の破断点が確認された。破断強度は300gを超えておらず煮込まれて軟らかくなっているものの、ザクッとした食感は残っていた。
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結び昆布
急激に破断強度は上昇して、層状になっているため複数回破断しながら、800gを超える高い値を示し、煮崩れせずに昆布の食感がしっかり残っていた。
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結び白滝
最初の破断点から、その後も多数の破断点を確認。結び白滝の1本1本が切れる食感が出ていた。
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餅入り巾着
破断強度は緩やかに上昇し低値を示しており、加熱による餅の軟らかさが出ている。明確な破断点は、餅を包む油揚げが表れていた。
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焼ちくわ
緩やかに破断強度が上昇し、煮込まれて軟らかくなっているが、その後明確な破断点を示していることから、煮込まれても崩れておらず、蒸し蒲鉾を始めとした練り製品同様の歯切れの良さが残っていた。
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(グラフは五十音順)
総括 ~おでんは食感の豊庫~
破断強度が500gを超えるようなウインナー、結び昆布、ちくわ、ちくわぶ、こんにゃくなどある程度食感のあるものから、破断強度が200g未満の魚河岸あげ®、厚揚げ、白はんぺん、餅入り巾着のように軟らかいものまで、適度な弾力があり軟らかい食感を得られる具材が多いことがおでんの特徴であった。
また、破断点(噛み切れる点)が前半にあるのは9品、後半にあるのは6品とおでんは噛み始めてから早い段階で噛み切れる具材が多く、バラエティーに富んだ食感であった。

実験に関する補足
測定の目的
本測定は品質ではなく、ヒトの食感に近い状態で測定することを目的としており、具(たね)を噛むときを再現できるように試料の調製やプランジャーの進入部位など考慮した。

研究室での測定
試料片のカット方法とプランジャーの向き
厚揚げ
十字に4等分して、各個体の中央部を測定ウインナー
1本をそのまま横にして中央部を測定魚河岸あげ®
1個をそのまま横にして中央部を測定牛すじ
串から外し、1枚ずつ横向きに置き、中央部を測定こんにゃく
表面に切込み(2㎝幅)を入れ、4㎝角サイズに調整、横向きに置き、切込み部分を避けて中央部を測定さつま揚
1個をそのまま横にして中央部を測定白はんぺん
対角線で4等分して、各個体の中央部を測定大根
十字に4等分して、各個体の中央部を測定玉子
縦に2等分して切断面を下にし、両個体の中央部を測定ちくわぶ
横に2等分して、両個体の中央部を測定つみれ
1個をそのまま横にして、中央部を測定結び昆布
1個をそのまま横にして、中央の結び目部分を測定結び白滝
1個をそのまま横にして、中央の結び目部分を測定餅入り巾着
1個をそのまま横にして、餅の入っている中央部を測定焼ちくわ
横に4等分して、各個体の中央部を測定
具(たね)の選択方法
1994年から紀文が毎年実施している鍋料理に関するアンケート調査や、実験直前に行ったアンケート調査などのおでんに関する項目のうち、「家庭で作る時によく入れる具(たね)」「好きな具(たね)」などのランキングから上位15品を抽出した。

実験用の試料
調理方法
上記具(たね)の内、大根・卵・牛すじについては下茹済の具であり、これら含んだ全15品をおでん汁で45分間の加熱調理を行った。

調理