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練りもの教室

練りものの塩分と高血圧症

  • 杉本 恵子先生(管理栄養士)
    profile
杉本 恵子(すぎもと・けいこ)さん 杉本 恵子(すぎもと・けいこ)さん
管理栄養士。相模女子大学食物科を卒業後、栄養士として大手百貨店の健康管理室に勤務。その後、「健康プラザ」という売場づくりに参加、成功へ導き、1991年心と身体の健康を考え、個人の健康管理の全体像を踏まえたトータルなウエルネス管理<健康意識への育成>を行うべく、株式会社ヘルシーピットを設立、代表取締役に就任。健康にとって本当に必要な事は何なのかを考え、「食事」「運動」「休養」の3点から、1人1人に適したパーソナルな健康づくりを提唱・実践している。

魚肉で作るかまぼこ・さつま揚・はんぺん・ちくわの1食あたりの平均塩分量は1g足らず。練りものの塩分量というのは高い印象がありますが、実は低いのです。さらに調味料を「だし」にするなど調理法を工夫することで、減塩はさらに可能です。

練りものの塩分は意外に少ない

加工食品のなかで、1食あたりの塩分量が多いのは、うどん・そうめんなどの麺類です。1食分の量も違いますが、厚生労働省が打ち出している1日の塩分摂取基準10gの1/3を麺類1食だけで取ることになります。
うどんなどに塩が使われるのは、麺のコシを出すため。それは練りものも同じです。かまぼこなどのあの弾力は塩のおかげです。
魚肉で作る、かまぼこ・さつま揚・はんぺん・ちくわの1食あたりの平均塩分量は約0.6g。練りものの塩分量というのは高い印象がありますが、実は1gを切っているのです。ほかの加工食品(魚肉ソーセージ・冷凍餃子・イワシ味つけ缶詰・レトルトカレーなど)の1食平均塩分量は約1.3g。それに比べて練りものの塩分量がいかに低いかが分かります。練りものとは、いわば下ごしらえ済みの魚。うまく活用したいものです。

練りものの1食あたりの塩分量(g)

2021年5月現在
紀文商品名用途例1食分の使用量の目安1食分の塩分量(g)
姫なると巻姫なると巻麺類の具厚さ5mm程度:2枚(7g)0.2
ふっくら伊達巻ふっくら伊達巻寿司だね厚さ1cm程度:2枚(30g)0.4
鯛入り蒲鉾粋 白鯛入り蒲鉾板わさ2枚(32g)0.7
鯛入り笹かま鯛入り笹かま酢の物厚さ1cm(34g)0.8
マリーン®(カニカマ)マリーン®トッピング2本(23g)0.4
焼ちくわ焼ちくわ煮物1/2本(43g)1.0
チーちく®チーちく®オードブル2個(34g)0.8
竹笛®(生ちくわ)竹笛®きゅうりのいこみ1本(35g)0.8
はんぺん大判はんぺん大判おでん種1/2枚(55g)0.9
はんぺん大判はんぺん大判澄まし汁1/4枚(28g)0.5
紀文つみれ紀文つみれつみれ汁1個(20g)0.3
揚ボール揚ボール煮物3~4個(33g)0.6

実際に株式会社ヘルシーピットで、紀文の練りものを使用したレシピと、類似している一般的なレシピとを塩分比較したところ、練りもののほうが塩分が低くなるものが多数ありました。

レシピの塩分比較

「カニカマと長ねぎのカニ玉風」
一人前塩分 0.8g
「カニたま」
基準レシピ塩分 1.1g

塩分を気にするなら調理でひと工夫

塩分の高い調味料を控えて代用品を活用したり、調理方法を工夫することで、減塩はまだまだ可能です。

塩分の高い調味料の「量を控える工夫」

  • 濃口しょうゆを「めんつゆ」や「コンソメ」に代用。煮もの、炒めもの、和えものを作る際に、濃口しょうゆの量を減らし、めんつゆやコンソメを加えます。

  • ぽん酢しょうゆは「めんつゆ」に代用。

  • マヨネーズは「プレーンヨーグルト」や「豆腐」に代用。マヨネーズにヨーグルトや豆腐を加えてよく混ぜると、さっぱりとした味になり、塩分もカロリーも控えられます。混ぜる割合は1:1くらい。物足りないときはコショウを加えて。

減塩テクニック①「魚河岸あげ®と、じゃこ辛ぽん」

切った「魚河岸あげ®」と、じゃこをフライパンで炒めて器に盛り、大根おろし、万能ねぎ、ぽん酢しょうゆをかけていただく料理。 じゃこを微乾燥のものに変えることで、一人前塩分が1.8g→0.9gに。

減塩テクニック②「はんぺんのみぞれ煮」

9等分に切った「はんぺん」を汁(つゆ)で煮て、なめこ・大根おろしを加えてひと煮立ちさせる料理。 汁(つゆ)のしょうゆをめんつゆに変えるだけで、一人前塩分が1.6g→1.0gに。

減塩テクニック③「マリーン®とブロッコリーのサラダ」

「マリーン®」とゆでたブロッコリー・じゃがいも・玉ねぎを、マヨネーズと塩で味つけしたサラダ。 塩を抜き、マヨネーズの代わりにプレーンヨーグルトを使うことで、一人前塩分が1.4g→0.7gに。

〈株式会社ヘルシーピット調べ〉

香りを利用

  • ハーブ
    ハーブ

    しょうが、にんにく、しそ、みょうが、ねぎ類など和のハーブや、セロリ、バジル、ローズマリー、パセリなど洋のハーブを利用します。肉を焼く前に漬け込んだり一緒に焼いたり、スープや和えものに刻んで入れると、香りが出て塩分が控えられます。

  • 香辛料
    香辛料

    唐辛子、カレー粉、こしょう、山椒などの香辛料を炒めものやスープに使うと、辛みや香りで塩分が控えられます。

  • 油

    ごま油、ガーリックオイル、ラー油など香りのある油を使います。炒めもので塩分を加える前に香りのある油を加えると塩分を控えられます。

  • のり
    のり

    焼きのりや青のりなどを和えものや汁ものに入れると、磯の味と香りで塩分が控えられます。和えものならしょうゆの量を1/2程度にしてもおいしい。

  • かんきつ類
    かんきつ類

    レモン、かぼす、柚子などのかんきつ類を加えると、香りと酸味で塩分が控えられます。和えものや魚・肉などの焼きものによく合います。酸味では酢を利用しても。

減塩テクニック④「かまぼこサンド」

1cmに切った「かまぼこ」に切り込みを入れ、きゅうり、青じそ、梅かつお、わさび漬け、明太子などをはさんだサンド。 梅かつおと明太子の分量を半分にして、梅かつおはみりんでのばし、明太子はレモン果汁でのばすことで、一人前塩分1.0g→0.9gに。

〈株式会社ヘルシーピット調べ〉

調理方法を工夫

  • 玉ねぎはよく炒めると甘みが出るので、スープを作る際に炒めてから作ると余分な調味料を控えられます。

  • ごまは炒ったりすったりすると香りがよくなるので、使う前にひと手間加え、ごま和えにはたっぷりごまを加えると塩分が控えられます。

  • サラダはドレッシングをかけずに、皿に盛る前に少量かけてよく和えます。

  • 市販のシチューのルーやホワイトソースを使用するときは、ルーやソースの量を控えて、豆乳や牛乳でのばしたり、つぶした豆腐などを加えます。

  • 缶詰を汁ごと利用します。サバや鮭、ほたてやカニなど魚介類の缶詰を汁ごと煮ものなどに利用すると、だしが加わり、余分な調味料を加えなくてもおいしくなります。

「旨み」を利用する

  • かつお節・昆布・煮干しで「だし」をとる
    だし

    汁ものを作る際に「だし」を使うと、香りと旨みがプラスされます。刺し身や寿司などで使うしょうゆも、汁(つゆ)で割るとおいしく、塩分も控えられます。

  • きのこ類を使う
    きのこ類

    しいたけ、マイタケ、しめじなどのきのこ類には、グアニル酸という旨み成分が含まれ、汁ものや和えものなどに加えると塩分が控えられます。とくに干ししいたけは旨みが強く、お湯より水で戻すと旨みが引き出されるため、より効果的です。

  • トマトを使う
    トマト

    トマトには、グルタミン酸という旨み成分が含まれ、ラタトゥイユなどの煮ものや炒めもの、煮つめてソースに使うと、さらに旨みが増して塩分が控えられます。

カリウムを含む食品を取り入れる

カリウムには余分な塩分を体の外に排出する効果が期待できるため、加工品を利用したり塩分の多い食事のときには、必ずカリウムを取り入れるようにしましょう。

<カリウムの多い食品>
    バナナ
  • いんげん豆などの豆類や納豆などの豆製品

  • 昆布、ひじきなどの海藻類

  • やまいも、さつまいも、じゃがいもなどのイモ類

  • ほうれん草などの野菜類

  • バナナ

バナナ

高血圧症の原因は塩分だけじゃない

株式会社ヘルシーピットでパーソナルな健康づくりをお手伝いしていますが、今のおじいちゃん・おばあちゃんはお元気だなあとつくづく思います。彼女らは今よりもすごくしょっぱいものを毎日食べていたはずなのに。

それは塩分と一緒に、山のような野菜を取っているからなんです。現在、野菜の摂取量を毎日350gとうたっていますが、全然足りていません。昔の知恵はすばらしい。そういう意味では、たとえば焼ちくわの穴にきゅうりを入れてオードブルにするというのも理にかなった方法なんですね。

夏になると、熱中症対策として「水分」「塩分」を取るようにとテレビなどで流れますが、それほど人間にとって水と塩は大切なものなのです。

1年代別の高血圧疾病者の割合

国民健康栄養調査(厚生労働省)によると、高血圧疾病者の割合を平成9年、平成18年、平成24年で比較すると、男女ともに20歳から70歳以上で高血圧を発症している割合が多くなり、平成9年から見ると平成18年では約2倍。6年後の平成24年でも増加傾向です。このことから、今後も高血圧疾病者の割合が増加していくことが予想されます。

年代別高血圧疾患者の割合(男性)
年代別高血圧疾患者の割合(女性)

2地域別塩分摂取量(年次別)

全国平均の塩分摂取量は、昭和61年=平均12.1g、昭和62年=平均11.7g、平成16年=平均10.7g、平成24年=平均10.0gとなっており、全国的に「減塩」がかなり浸透しています。

3血圧に関わる要因

②のとおり、塩分摂取はここ二十数年かけて減少傾向ですが、逆に高血圧症は増加傾向にあります。血圧に関わる要因としては、次のことがあげられます。

塩分摂取量

野菜の摂取量

肥満(BMI 25以上)

運動習慣

飲酒習慣

喫煙習慣

ストレス

総括

以上①〜③の結果をもとに、高血圧疾病要因は二十数年前とは違って、単に塩分の取り過ぎだけではないと推測されます。

食品に含まれる塩分量も、食品メーカーの努力によって必要塩分量をぎりぎりまで減少させた商品開発を各社とも進めています。ですから、食品からの塩分摂取量は、20年前に比べて少なくなり、基準値に近づこうとしています(男性10.8g/女性9.3g H24年度国民栄養調査より)。また、保健師・栄養士の食事指導によって「減塩」が国民に浸透しており、現在の高血圧症の大きな問題は、生活習慣病の増加(糖尿病の可能性または疑いが、平成9年から平成24年まで男性で約10%、女性で約7%増加)なのです。とくに糖尿病や脂質異常症(以前は高脂血症)は、血液中の脂肪・糖分の数値が高く、心臓にかかる負担が大きくなり、血圧も上昇しやすくなります。

今後は、塩分摂取だけではなく、脂肪や糖分の摂り過ぎも意識した生活習慣病の予防改善を行うことが大切です。とくに肥満の改善を行うことが高血圧症を発症させない重要なポイントとなると推測できます。