プロフィール
リシャール・ロードさん
フランス・ブレス出身。パティシエとしてフランス、アメリカ、オーストラリアでの修行の後、日本文化に興味を持ち、1989年に来日。1998年、東京・荻窪に「伝統的なフランス料理を家庭的な雰囲気で楽しめる」をコンセプトとした「Brin de Muguet(ブラン ド ミュゲ)」をオープン。日本文化とフランス文化の両方に精通している。
私の出身地であるブレスでは、基本的には魚より肉を食べることが多いです。しかし、20年くらい前にはすでに、スーパーで「surimi」(当時の呼び方は違ったかもしれませんが)が売られていました。カニサラダやカナッペの具材として、食卓に並んでいた記憶があります。家庭ではすっかりおなじみの食材ですね。価格もとても手ごろです。
フランス人は旧来の考え方を大切にするので、何か新しいものに対して一度にブームがくることはあまりありません。パリやリヨンが発信源となり、時間をかけて少しずつ浸透していく感じです。ただその分、一過性のブームでは終わらず、長く続くことが特徴といえるでしょう。最近では、しょうゆもスーパーで売られるようになってきました。
「surimi」がフランスのスーパーで手軽に手に入るようになったように、はんぺんやかまぼこといった日本の伝統的な練りものも、いずれフランスで日常的に食べられる食材となる可能性はあると思います。はんぺんは、フランス料理の定番であるテリーヌやムース、クネルなどと似た食感で食べやすいと思います。ホワイトソースなどでニョッキのように使っても面白そうですね。かまぼこは、あの弾力と食感がこれまでのフランス料理の素材にはないものなので、何か新しい食べ方の提案などができるといいのではないでしょうか。伝統を守ることはもちろん大切ですが、料理も時代に合わせて少しずつ変化していくことも必要なのだと思います。

パリでは社員食堂でも「surimi」を使ったメニューが提供されている。(参考資料)
地域によって多少の差はありますが、魚は日常的に食べられている食材です。カニもその一つとして食べられているので、日本のような「カニ=ごちそう」というイメージはないですね。そのため、「surimi」にカニの代替品という意識もありません。
「surimi」はスーパーで冷凍されて売られていることが多く、マヨネーズとあえたサラダやサンドイッチ、デリのメニューとして使われています。巻き寿司にも使われることが多いですが、「surimi」が日本由来の食材だということはあまり知られていないと思います。
(S.S. 29歳 男性 パイス・バスコ在住経験あり)

ディップソースとセットになった商品など、バラエティも豊か。

サラダにも使われている。
(T.T. 32歳 女性 ドルトムント在住)
※ドイツでは「冷たい食事」(ハム・チーズ・サラダなど、火を使わずに用意できるもの)と「温かい食事」(パスタやメーンなど)を食べ分ける習慣があります。朝・晩は「冷たい食事」で済ませることが多いようです。
チェコは陸地に囲まれた国なので、基本的に魚を食べる習慣はあまりありません。食べるとしたら、マスやコイなどの淡水魚です。海水魚は輸入物のみのため高価ですね。共産主義国家の時代には、ロシア産のカニが「高級品」として流通していたため、「カニ=ごちそう」という意識は、今も残っています。
「surimi」はスーパーで日常的に売られています。チェコではパンに塗るペーストを作るときに使われることが多いです。魚よりも低価格で手に入り、そのまま使えることが魅力のようです。そもそも魚を食べることがチェコでは珍しいことなので、「surimi」も「ちょっと目先の変わったものを食べたいとき」などに食べられるようです。
(A.E. 32歳 女性 クトナー・ホラ在住)

ボイルしたエビなどと一緒に並んで売られている。

子どものおやつにも手軽で便利。
(M.S. 32歳 女性 ロンドン在住)
魚を食べるか、肉を食べるかは、地域によってだいぶ異なります。内陸の都市ではやはり肉がメインです。魚の価格自体はそれほど高くなく、なかでも青魚は安く売られています。カニも食べられてはいますが、日本のような「高級食材」という認識はありませんね。
ローマで生活していたころは、あまり食べる機会がなかったのですが、「surimi」がスーパーに置いてあったことは知っています。
遠く離れたヨーロッパで身近な日本の食材に出会ったことを、とても意外に感じた記憶があります。
(R.I. 32歳 女性 ローマ在住経験あり)
