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江戸期のかまぼこと幕の内弁当

  • 株式会社紀文食品

江戸時代には板付き蒸しかまぼこの製法が確立され、細工かまぼこが作られるように。芝居の幕間に食べるお弁当に欠かせない存在になるなど、その食シーンも大きく広がりました。様ざまな大衆文化が爛熟した江戸時代、かまぼこも急速な発展を遂げていったのです。

製法や形態も様ざまに進化

農学博士の清水 亘氏の著書『かまぼこの歴史』によれば、かまぼこはもともと竹輪のような形状をしていましたが、室町時代に板付かまぼこが作られるようになりました。

当初はすり身を板に付けて焼く焼きかまぼこが主流でしたが、江戸期に入って蒸しかまぼこの製法が開発され、関東全域に広まります。

それとともに板付かまぼこが大きく発展していきました。

大板かまぼこについては「寸法下幅三寸、高一寸六分五厘、厚四分切り」などの、大きさについても細かな規定があったようです。

大板かまぼこなど

大板かまぼこなど
千葉大学名誉教授・松下幸子氏監修の2003年「江戸開府400年記念特別企画 紀文おせちプレスゼミナール『江戸のおせち料理と鯛』」で、再現された江戸期の小板かまぼこと大板かまぼこ。

類聚雑要抄

類聚雑要抄
平安時代の古文書『類聚雑要抄』室町時代の写本に、永久3年(1115年)に時の関白右大臣が引っ越しをした際の宴席で出された高杯の挿絵があり、その中でかまぼこも紹介されている(絵の右下)が、当時は竹輪のような形状をしていた。

「鯛」で造られていた江戸期のかまぼこ

江戸時代には200を超える料理本が出版されたと言われています。
江戸時代の初期の料理書『料理物語』(1643年刊)には、「鯛は、はまやき、すぎやき、蒲鉾(中略)其の外色々使う」とあり、また「料理集」(1733年刊)『黒白精美集 』(1733年刊)にも、鯛は魚類の筆頭に挙げられ、鯛を使った蒲鉾やすり身料理の調理法が多数紹介されています。

『料理物語』(個人蔵)の鯛の記述

『料理物語』(個人蔵)の鯛の記述

江戸期のかまぼこは料理の華

文化が成熟する江戸期には、料理が多いに発展します。
これに伴って、蒸し加熱の技術が確立されたことにより、色付けやすり身に他の材料を混合させたり、形も様ざまな工夫がなされるなどかまぼこも広がりを見せます。結果、創作性の高い「切り出しかまぼこ」や「模様入りかまぼこ」も江戸期には作られたようで、その時代の料理書にたくさん載っています。

『料理早指南(写)』(個人蔵)

『料理早指南(写)』(個人蔵)
(写真左側は書籍『かまぼこの歴史』に掲載されている要約)

1801年に刊行の会席からお弁当の献立まで幅広く紹介した『料理早指南』では、鯛や平目のすり身と卵の黄身、黒胡麻で三色に仕立てた「玉川」や、萌黄色と白の二色の「春霞」、相良布という海草を包み込んだマーブル模様の「墨流」といった美しい細工かまぼこが紹介されています。

紀文にて再現した「かまぼこ玉川」

紀文にて再現した「かまぼこ玉川」

「行事食やハレの日」には欠かせないもの

江戸の食文化に詳しい大久保洋子氏は、論文「江戸時代料理本に見る食材の研究――かまぼこの献立上の位置づけ――」の中で、かまぼこは日常の惣菜ではなく特別な行事や慶事などに限られていた高級品であったと考察されています。江戸期には時代が進むにつれ、それがだんだんと庶民の間で親しまれるようになりました。と記述しています。

細工かまぼこの発展などもあって、料理屋のメニューとして提供されるようになり、食べるシチュエーションも広がっていきます。「幕の内弁当」もそのひとつでした。幕の内弁当は、歌舞伎芝居の幕間に食べるお弁当のこと。

芝居茶屋が桟敷や升席の観客のために用意したもので、この弁当の副菜としてかまぼこが使われるようになったのです。江戸時代の風俗や事物をまとめた『守貞謾稿』 によれば、「幕の内」の名前を最初に使ったのは、芳町(現在の中央区日本橋人形町)にあった「万久」という仕出し屋でした。

『東都高名會席盡』万久 髭の意休(国立国会図書館蔵)浮世絵集『東都高名會席盡』には役者とともに江戸の名店の店構えや名物が紹介され、「万久 髭の意休」には仕出し屋「万久」の幕の内弁当が描かれている。副菜の中央にかまぼこが見える

『東都高名會席盡』万久 髭の意休(国立国会図書館蔵)
浮世絵集『東都高名會席盡』には役者とともに江戸の名店の店構えや名物が紹介され、「万久 髭の意休」には仕出し屋「万久」の幕の内弁当が描かれている。副菜の中央にかまぼこが見える

江戸の庶民に親しまれた味

守貞謾稿』の雑劇の稿には、当時の幕の内弁当について次のような記述があります。

「中飯、江戸は幕の内と号(なづけ)て、円扁平の握り飯十顆を僅かに焼之也。添之に焼鶏卵、蒲鉾、蒟蒻、焼豆腐、干瓢、以上是を六寸重箱に納れ、人数に応じ、観席に運ぶ・・・・」。

紀文では、『守貞漫稿』を参考に上述の松下幸子先生の監修のもと、この記述にならって江戸時代の幕の内弁当を再現しました。

かまぼこは彩りの点でも大事な役割を果たし、かまぼこが広く親しまれるきっかけになったことが読み取れるのではないでしょうか。

贔屓の役者の芝居はもちろん、幕間に食すお弁当も当時の庶民の大きな楽しみであったことでしょう。

松下幸子氏の監修をもとに再現した幕の内弁当

松下幸子氏の監修をもとに再現した幕の内弁当

『守貞謾稿』(国立国会図書館蔵)

『守貞謾稿』(国立国会図書館蔵)