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アンケート形式の正月の準備や過ごし方、おせち料理に関する生活者の調査「紀文正月調査」は1979年から始まりました。その後以下のような調査・分析・発表をしています。
1994年から2008年に募集した「我が家の正月食卓写真募集」では、4,749枚の写真と寄せ書きが集まりました。そこには伝統料理もあれば新しい料理もあり、正月の豊かな食風景をリアルに伝える貴重な資料を蓄積することができました。 また、2007年には「正月伝統料理の生活者調査」、2011年と2022年には「正月魚料理の生活者調査」を実施しました。
これらの長年の膨大なデータを分析していくと地域性が浮かびあがってきます。そこで、正月料理の地域性を可視化すべく、2010年、伝承料理研究家である奥村彪生先生に、データをご覧いただき正月料理の変遷をインタビューするとともに、全国の郷土のおせち83点の料理名とその特徴をご教示いただき、同年発表しました。
2024年、紀文ではその軌跡をカタチに残したいという想いから、その83点の中から現代でも再現可能な料理、召し上がっていただきたいものを江上料理学院の副院長である江上佳奈美先生といっしょに厳選。各都道府県で代表的なものを再現するとともに、日本地図を制作しました。

北海道
氷頭(ひず)と呼ばれるサケの頭の部分を大根と一緒になますに仕立てた料理。北海道ではルイベ、ちゃんちゃん焼きなどサケの料理が多い。

青森県
ナマコは青森県上北郡横浜町の特産。12月〜2月ぐらいが旬とされ、ナマコの薄切りを酢漬けなどにしておせち料理の一品として用いられる。

岩手県
サケの身とイクラが入っていて見た目が鮮やかな紅色であることから紅葉漬けと呼ばれ、三陸地方のおせち料理の冬の名物。

宮城県
ナメタガレイは魚体にぬめりがあるのが特徴で、冬に産卵期を迎え子持ちのものが子孫繁栄や商売繁盛に縁起のよい食材とされる。

秋田県
ハタハタは焼き物や鍋物のほか、しょっつるの材料として利用される。秋田では「ハタハタなしではお正月を迎えられない」というほど。

山形県
米沢市の名物料理。コイが貴重なたんぱく源として用いられ、お正月の他、祝いの席で食される。コイの臭みは酒とざらめを使って抑えるとよい。

福島県
東北・信州地方の郷土料理で、ゆでた青大豆をだし汁につけたもの。大根おろしをかけても美味。数の子を加えた豆数の子という料理もある。

茨城県
川魚は煮汁が冷たいうちから煮ると臭みが残らず、魚の身がしまる。ほかの淡水魚でも甘露煮が作られ、保存食として用いた。

栃木県
日光市にはようかん専門店が複数あり、各家庭で好みの味があるそう。ようかんの材料の小豆は厄除けや魔除けとして食されてきた食べ物。

群馬県
干し大根のなます輪切りにし天日に干した大根で︑にんじんなどの具材を巻き酢漬けにしたもの。ゆずを巻いたものは「ゆず巻き」とも呼ばれる。

埼玉県
かつてはお盆のごちそうがうどん中心だった地区があり、お盆以外にもお正月や祭りの日には白飯・赤飯・うどんなどが利用された。

千葉県
東京湾や利根川の水郷一帯にかけてハゼがよく獲れたため、甘露煮にして保存食としていた。また、ハマグリなども甘露煮にする。

東京都
「カステラ玉子」「カステラ蒲鉾」が、伊達巻の原型とする説が有力。使用する材料として芝エビやタイなどがおすすめ。

神奈川県
細く長く地中に根を張るごぼうは、縁起を担ぐ食材としておせち料理に利用される。ごぼうが硬い場合は出汁を増やすとうまく仕上がる。

山梨県
山梨県の名産でアワビをまるごと醬油だれでじっくり煮しめたごちそう料理。土産物としても有名。昔は駿河湾のアワビを用いたそう。

新潟県
身欠きニシンを使用する。身欠きニシンは貴重なたんぱく源で、ニシンは鮮度劣化が早いため乾燥させ保存食にした先人の知恵の一品。

富山県
寒天に溶き卵を入れて固めたもので、見た目も美しい。石川県では「べろべろ」と呼ばれ、他にも「えびす」という名前を持つ。

石川県
雄と雌の2匹のタイを腹合わせにしたかたちで盛り付けることから縁起をかつぐ料理。婚礼などの祝い事のときにも食される。

福井県
打豆は秋に収穫された大豆を水に浸してつぶして乾燥させた保存食で、滋味深い食材。法要行事である報恩講でも用いられることもある。

長野県
長イモの透明感のある白さが重箱の中で映えるおせち料理の一品。食紅などで色をつけるレシピもあり、まるで和風スイーツ。

岐阜県
海に接していない岐阜県では、大晦日の年取り魚として、また、縁起物として丸干しした尾頭付きの大きいイワシを食す地域があった。

静岡県
ブダイはブダイ科に属し、冬場は特に味がよくなる。春菊などをさっと煮て添えると、彩りも鮮やかで、お酒がすすむ一品。

愛知県
養鶏が盛んな愛知県の伝統料理。鶏肉のほか、きんかんなどを入れることもあり、たまり醬油を使った、甘辛の味付けが特徴。

三重県
大根・にんじん・ごぼうなどを細切りにして砂糖・醬油・酢で煮た料理。なますを煮ることで、素朴で優しい味に仕上がる。

滋賀県
赤こんにゃくは近江八幡の名産品で、祝い事には欠かせない食材。三二酸化鉄で赤く染めたもので、滋賀ではおでんでもおなじみ。

京都府
関西地方の定番のおせち料理。干した棒ダラを戻して砂糖と醬油でやわらかく煮上げる。京都では、えびいもと一緒に炊くことが多い。

大阪府
元来は尾頭付きの鯛の塩焼きを飾り、三が日の間は箸をつけないという風習から、その名がついた。関西におけるお正月の象徴的な料理。

兵庫県
神戸で食されるおせち料理の一品で、正月三が日には竈の神さまを驚かせないよう、暮れに作り置きをする家庭もあったようだ。

奈良県
奈良では特産「宇陀金ごぼう」を使うこともある。歯ごたえと爽やかな酸味が特徴で、保存性が高く、祝い肴として欠かせない一品。

和歌山県
サンマを開いて塩を振り、じゃばらや橙の果汁で味付けする。果汁がない場合は酢で代用できる。なれ寿司でも有名な和歌山らしい一品。

鳥取県
数の子は子孫繁栄の縁起物。和え物の種類も多く、古くからおせちに用いられてきた。黄色と白の上品な組み合わせがお正月を彩る。

島根県
アカガイより小ぶりなサルボウガイで作ることもある。貝の濃い旨みと独特の食感が際立つ一品で、お正月だけでなく祝い事に欠かせない。

岡山県
県内山間部に見られる料理。黒豆、昆布、勝栗と縁起物尽くしのめでたい料理。素材の形を崩さず、含め煮にして、お正月の福を願った。

広島県
福山市の特産。大きな芽を持つクワイは「芽が出る」の縁起担ぎから祝いの膳に用いられる。その形は美しく、出汁を含んだ味わいは絶品。

山口県
下関の特産。福を祈って食す縁起物。刺身・揚げ物・鍋など調理法は幅広い。なかでもフグ刺しは正月料理の楽しみの一つ。

福岡県
鶏肉と根菜を大ぶりに切って甘辛く煮含める福岡の正月料理。鶏の旨みが全体に行き渡り、冷めても美味しくいただける一品。

佐賀県
クエの別称がアラ。お正月が最も脂が乗る時期で人気の高級魚。身は上品で強い旨みをもち、冬のごちそうとして珍重される。

長崎県
お正月に大きい物を食べると縁起がよいとされ、沿岸部のお正月に供された食材。クジラは赤身・ベーコン・さらしなど食べ方も豊富。

熊本県
れんこんの穴に辛子みそを詰めた天ぷら。熊本県の郷土料理で正月だけでなく普段も食す。ゆでたレンコンの穴に辛子みそを詰めた天ぷら。お正月だけでなく、普段も食される。辛子の刺激とレンコンの歯ごたえが特徴。

大分県
切り身を焼き、酒・醬油・砂糖・みりんの照りだれを絡めて仕上げる料理。脂の乗った身と、つやのある照りが特徴の一品。

宮崎県
きんかんは南九州地方の特産で、皮ごと食べることができる果実。つややかで、その鮮やかな黄色がおせち料理に彩りを添える。

鹿児島県
豚なんこつ煮豚、根菜、こんにゃくをよく煮込んだ、養豚の盛んな鹿児島の郷土料理。焼酎を使うことで肉の臭みが和らぎ、とろりとやわらかく煮える。

沖縄県
沖縄県では田芋のことを「ターンム」と呼び、祝い事にも欠かせない料理。甘く仕上げた味わいは、まさに沖縄風きんとん。
注釈:ここに登場する料理は、複数の都道府県に出現するものもあれば、県内の全域で食べられるもの、県の一部地域に出現するものまでさまざま。また料理名については、地域独自の名前を持つものもある。