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正月の魚の現代的な意義

 - まとめにかえて -

四方を海に囲まれ、豊かな漁場が点在する日本では、古くから水産物がさまざまな方法で運搬され、食材として供されてきました。そのもっとも古い形が、古代の神まつりにささげられた神饌にあることは、たびたび述べたとおりです。

正月は、歳神様を迎えてこの一年の無事を願うもっとも重要な節日であり、その日に貴重な食材である魚を食することが必要とされていました。庶民にとっては、作物が不足なく収穫でき、日々をつつがなく平穏に過ごす、そしてそれが子々孫々にわたって永続することが願いであり、正月をはじめとする節日は、日常の平和とその継続を願うための大切な年中行事だったわけです。

かつて、沿岸の村から遠路はるばる塩鮭や塩鰤が運ばれてきた頃、運ばれた時間や手間は、その食べ物の価値そのものでもありました。食べる人も、それがどこから、どうやって、誰によって運ばれてきたかを知っていました。その当たり前のことが、食べ物を容易に手に入れることができるようになった現代の日本では、必ずしも当たり前ではなくなっています。

正月に魚を食べるという習慣は、幸いなことに現代の日本社会に根強く残っています。そこに地方色が色濃く表れることも、先述したとおりです。この正月の魚が、どのようないわれで食され続けているのかに思いを馳せれば、自然への畏怖と感謝をおのずと実感できるはずです。「節日の魚食」に込められた「精神的栄養」は、現代の日本にこそ必要とされているのかもしれません。

魚食の地域性

1965年、鳥取県生まれ。旅の文化研究所主任研究員。法政大学非常勤講師。筑波大学大学院修士課程環境科学研究科修了。民俗学専攻。

定期市、行商などの交易伝承や、庶民の信仰の旅、女性の旅などについて調査研究に携わる。

主な著書・論文として「日本の民俗3 物と人の交流」(吉川弘文館・共著)、「絵図に見る伊勢参り」(河出書房新社・共著)、「市稼ぎの生活誌―農家日記にみる定期市出店者の生活戦略―」(『日本民俗学』第264号)など。

15. 笹井良隆編著『大阪食文化大全』西日本出版社、2010年、p.184
16. 越智キヨ著、星野書店、p.87