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お正月のいわれ

江戸文化と和の暮らし −日本人とおせち−

江戸東京博物館館長 竹内 誠(たけうち まこと)

元 江戸東京博物館館長 竹内 誠(たけうち まこと)
江戸の暮らしはシンプル&スロー、つまり自然や人との共生を志向していました。おせち料理が庶民に定着したのは江戸時代。江戸の庶民が親しんでいた和の暮らしと、現代の暮らしについて振り返り、見直してみたいと思います。

行動文化 −信仰と食の楽しみ−

春夏秋冬、江戸ではさまざまな楽しみがありました。春は梅見、花見、潮干狩り。夏は花火、蓮見。秋は月見、菊見、紅葉狩り。冬は雪見というように、四季折々の楽しみがあり、そこに、食の楽しみもありました。江戸時代の行動文化をみると、信仰と娯楽が一体となっていました。お参りに行き、その途中で食事をする楽しみもありました。江戸時代の随筆「世事見聞録」には、江戸の人たちがいかに四季折々の外出を楽しみ、食を楽しんでいるかが記されています。

夫(おっと)は未明より草履(ぞうり)・草鞋(わらじ)にて棒手振(ぼてふ)りなどの家業に出るに、妻は夫の留守を幸ひに、近所合壁(がっぺき)の女房同志寄り集まり、おのれ己が夫を不甲斐性(ふがいしょう) ものに申しなし、(中略)或(あるい) は芝居見物そのほか遊山物参(ゆさんものまい)り等に同道いたし、雑司が谷、堀の内、目黒、亀井戸、王子、深川、隅田川、梅若(うめわか) などへ参り、またこの道筋、近来料理茶屋、水茶屋の類沢山(たぐいたくさん) に出来たる故、右等の所へ立ち入り、又は二階などへ上り、金銭を費(ついや)して緩々(ゆるゆる)休息し・・・」(『世事見聞録』)

長屋のかみさん連中が、旦那が仕事をしている昼間、連れ立って遊びに出かけています。雑司が谷は鬼子母神、堀の内はお祖師さん、目黒はお不動尊さん、亀井戸は天神さん、王子はお稲荷さん、深川は八幡さんなど、東京に住んでいる人ならすぐにわかる場所ばかりです。そして、お金を使って、飲食を楽しんでいるのです。女性たちが積極的に出かけて楽しんでいる、今と変わらない様子がよくわかります。

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