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紀文・アジア練りもの紀行 vol.3 台湾編

紀文・アジア練りもの紀行 vol.3 台湾編

プレーンからカラフルなものまで、台湾には練りものがたくさん

プレーンからカラフルなものまで、台湾には練りものがたくさん

海に囲まれた台湾では、魚は毎食のようにいろいろな料理で食べられています。台湾料理では豚角煮に魚団子が入っているなど、日本と比べても魚と肉を合わせることが多く、とくに、練りものは調理の手軽さから、さまざまな料理に使われています。 台湾全土、どこの市場やスーパーでも見かけますが、映画のロケ地にもなった“九份(チョウフェン)”でも、白身魚で作った魚団子が売られています。プレーンなものはもちろん、炭、紅麹でカラフルに色づけされたもの、キムチを練りこんだものなど、バリエーションに富んだ種類があり、お土産として買い求める人もいます。
紅麹とプレーン 炭とキムチ
(九份の練りもの。左は紅麹とプレーン、右は炭とキムチ)

また、“高雄(カオシオン)”や“台南(タイナン)”など南西の海辺の街では、「虱目魚(シームーユイ)※」の養殖が盛んで、これも魚団子に加工されています。高雄では、ほかにいか団子もよく食べられています。
最近の台湾では野菜やスパイスなどを入れた食感や彩りのよい練りものが増えていて、昔に比べると、さまざまな味を楽しめるようになったと思います。
台湾では、すり身を買って調理することも多く、具材を加えて揚げるほか、団子状にしてスープに入れたりしています。

※学名:Chanos chanos、和名:サバヒー。淡泊な味わいの白身魚で、台湾ではよく食べられている。

後藤 ウィニーさん

後藤 ウィニーさん1958年、台湾生まれ。台湾で働いたのち日本人と結婚して来日。日本の食材で作るWinnie流の台湾料理が評判となり、料理の道に専心することに。現在は料理教室「winnies-kitchen」を主宰するほか、雑誌などで活躍。2女の母でもある。
著書に、「Winnieの台湾キッチン」(文化出版局)。

屋台料理は練りものが主役!?

屋台料理は練りものが主役!?

観光スポットとしても有名な夜市などの屋台では、汁ものや炒めもの、点心など、練りものを主役にしたメニューがたくさん並んでいます。今回ご紹介する「鶏捲(ジーチュエン)」と「肉羮(ロウカン)」もそのうちのひとつで、どの市に行っても必ず食べることができる定番料理です。
「鶏捲」はほかにも、豚肉やえび、いかなど、さまざまなものを具材に使い、ワンタンの皮で巻いたもの、巻かずにそのまま揚げたものなど、いろいろなバリエーションがあります。屋台料理としては少し値が張るので、子どものころはたまに母が買ってきてくれるのがとても楽しみでした。来客のあるときや家族の祝いごとに、食卓に登場していたのを覚えています。今回は白身魚のすり身と鶏肉を湯葉と海苔で巻いた、思い出の味を再現したレシピで紹介します。
一方、「肉羮」は、毎日の食事や軽食として気軽に食べるメニュー。「羮(カン)」はとろみのついたスープのことで、今回は練りものを主役に豚肉を加えた、「肉羮」を作りました。お店によってほかにも、鶏肉、するめいか、魚の切り身、うなぎなど、違った具材を使っているので、それぞれ、お気に入りの店に食べに行きます。

オタオタ

「おでん」や「てんぷら」、日本になじみ深い練りもの料理も

「おでん」や「てんぷら」、日本になじみ深い練りもの料理も

台湾には、「鶏捲」と「肉羮」以外にも練りもの料理が豊富です。
中でも、一番人気があるのは、いかのすり身をピンポン玉大に丸めた「花枝丸(ホワヅーワン)」。これは、冷凍の花枝丸がスーパーなどで売られているので、自宅で揚げます。プリッとしたいかの食感がよく、いくつも食べてしまうおいしさです。
次に、魚団子の代表料理と言えば「魚丸湯(ユイワンタン)」でしょう。あっさり味の澄んだスープに魚団子を浮かべて、みじん切りのねぎやセロリを散らすだけのシンプルなメニューです。これは台湾だけでなく中国でも好まれていて、台湾から程近い中国・福建省の“廈門(アモイ)”には専門店がいくつもあるほど。ここで供されている「福州魚丸(フージョウユイワン)」はふわっとした食感の魚団子のなかにジューシーな肉餡が入っているのが特徴です。
それから、日本でおなじみのおでんは台湾でも人気のメニューで、「関東煮(グァンドンジュー)」「黒輪(オーレン)」「天婦羅(ティエンフールォー)」と、地域や具材によって呼び名は変わりますが、どれも見た目は日本のおでんによく似ています。鶏ガラスープや中華スープで煮込み、ケチャップとチリソースを混ぜた甘辛いタレや胡麻ダレなどをつけていただきます。
「天婦羅」は「甜不辣(ティエンプラー)」と書くこともあり、こちらの場合は揚げたてのさつま揚を売っていることが多く、“基隆(キールン)”などの名物としても知られています。

台湾の市場で売っている作りたての練りもの

台湾の食を日本の家族でもぜひ味わって

台湾の食を日本の家族でもぜひ味わって

台湾は共働きが一般的なために、家族での外食が頻繁ですが、私の母は台所に立つことが多く、娘の私にも台湾の伝統料理やわが家の味を教えてくれました。
結婚を機に来日してからは日本で故郷の味を再現しようとしましたが、当時はまだ台湾の食材や調味料が手に入りにくく、日本にあるもので代用するなどの試行錯誤を重ねた結果、満足のいく台湾料理を作ることができるようになりました。
「肉羮」のレシピに登場する「工研烏酢(ゴンイェンウーツゥー)」や「沙茶醤(サーチャージャン)」は、現地の味には欠かせないもの。今では輸入食材店やインターネット通販で手に入りますが、ウスターソースや黒酢、XO醤などが家にあれば、代わりに使うのもよいでしょう。 私の家族をはじめ、日本の友人達も「台湾料理はおいしい」と言います。もともと日本人の味覚に合う料理ですから、今回のレシピをきっかけに、ぜひ日本の家庭でも楽しんでほしいと思います。

後藤 ウィニーさん

後藤 ウィニーさん1958年、台湾生まれ。台湾で働いたのち日本人と結婚して来日。日本の食材で作るWinnie流の台湾料理が評判となり、料理の道に専心することに。現在は料理教室「winnies-kitchen」を主宰するほか、雑誌などで活躍。2女の母でもある。
著書に、「Winnieの台湾キッチン」(文化出版局)。