
- プロフィール
料理研究家 渡辺 あきこ(わたなべ・あきこ)
土井勝料理教室の講師を経て料理研究家に。基本を押さえて作りやすくアレンジした家庭料理に定評がある。プランタン銀座の料理教室でも活躍中。著書に『ご飯料理110品』(高橋書店)『今日のごはんは?』(NHK出版)、『基本の和食』(学研)他。
地域によって馴染んだ味がある、日本の伝統食「おでん」
簡単に調理ができてメインのおかずになるおでんは、我が家でも定番のメニュー。私は竹輪とはんぺん、子どもは玉子と大根が好きで、必ず入れる種ものです。
おでんの味は入れる種もので決まるので、地域や家庭の特性が色濃く表れる料理です。
例えば、宇和島はホタルジャコを使ったじゃこ天、静岡では鰯を使った黒はんぺんと、地元で捕れる魚でできた練り製品を入れます。関西の牛すじや関東のちくわぶのように、地域特有の種ものもあります。
味付けも、同じ醤油味でも関西では淡口醤油、関東では濃口醤油を使いますし、味噌味も名古屋は八丁味噌で味付けし、静岡では醤油味のおでんを味噌だれで食べます。だしも、沖縄では地元の名産品の豚足を使うなど地域色が見られます。
このように、地域によってそれぞれ違った味わいがあるのも、おでんならではの魅力です。
料理初心者にもおすすめ、コツは2段階の調味
おでんは調理がとても簡単なので、コツさえつかめば誰でもおいしく作れます。
ポイントは何で旨味を出すかを初めに決めること。竹輪などの練り製品や昆布が味を出すもので、その旨味を吸っておいしくなるのは、こんにゃくや巾着、豆腐などです。
まず、だしをとって味付けをしますが、種ものが味の決め手になることを忘れないで下さい。具材の塩分や旨味が汁に出るので、ポイントは薄味にしておくことです。
大根やじゃがいもなど煮えにくいものと練り製品を入れ、15分〜20分煮込んでから、汁の味をみて調味します。味見を種ものですると、まだ十分に味が染みていなくて薄味に感じることがあるので、必ず汁の味をみてください。
ここで火を止めて30分程度寝かせると、ぐっと味が染み込んだおいしいおでんになります。
食べる直前に、はんぺんや早煮えの野菜などサッと煮える種ものを入れて完成です。土鍋などそのまま食卓に出せるもので作れば、手間も省けます。
「スピードおでん」は、忙しいお母さんにもぴったりの献立
最近は、核家族化で少人数の家庭や働くお母さんが増えているので、時間のかかる料理はとかく敬遠されがちです。
おでんは、たくさんの種もので時間をかけて煮込まないとおいしくならないと思っていませんか?今回はたった20分でできる「スピードおでん」を紹介します。工夫次第で、短時間でもおいしく作れますよ。
ポイントは、大根やじゃがいもなど、煮込みに時間がかかる野菜を、電子レンジで加熱すること。電子レンジを使うと、お湯で煮るより栄養が逃げず、煮崩れもしにくくなり、味の染み込みも良くなります。
大根やこんにゃくなど、味の染み込みにくいものを、薄切りにしたり、かくし包丁を入れるのもポイント。
まず、塩をひとつまみ入れた熱湯で、卵をゆでます。6分間ゆでると、黄身のとろりとした半熟玉子が出来ます。熱湯から卵を入れるので、ゆで時間の短縮になります。その間に、電子レンジでじゃがいもと厚さ1cmに切った大根を6分間加熱し、こんにゃくにかくし包丁を入れて熱湯で2〜3分ゆでます。これで下ごしらえは完了。他の種ものと約15分間煮込みます。
やはり、調理後30分程度置いておくと、良く味が染み込み、おいしく仕上がります。
少人数でもおいしい野菜おでん、栄養バランスも抜群
今回提案した「和風野菜おでん」は、竹輪等の練り製品で旨味を出し、煮込みに時間がかかる人参は薄切りにし、京野菜の水菜や白菜を入れました。サッと煮るだけなので、小鍋仕立てで一人か二人でも気軽におでんが楽しめます。
おでんは今まで主婦から、野菜をもっと摂りたい、彩りがほしいなどの要望が挙げられていましたが、おでんの旨味たっぷりの汁でいただく野菜は、抜群のおいしさです。練り製品は、1種類でも旨味が出ます。薄切りにした竹輪に青菜を放すだけでも簡単におでんになります。
野菜おでんは、魚のたんぱく質に加え野菜のビタミンが摂れ、栄養バランスが良いメニューです。
おでんと相性の良い野菜は、トマトやさつまいも、ブロッコリーなどです。どれも、おでんには意外と思われるかもしれませんが、だしの味と練り製品の旨味に良く合い、赤、黄、緑と目にも鮮やかで、食欲もそそります。
ワカメを入れてすまし仕立てにしたり、少しアクのある春菊を下ゆでして汁をかけたりと、野菜や海藻類を「おでん仕立て」の一品にするのもアイディアです。
春は若筍やレタス、夏は絹さやなどの豆類やなす、秋はきのこ類など、旬の食材を味わうのもおすすめです。
おでんの主役はどんな味付けにも合う練り製品〜アレンジ次第でエスニック風にも
おでんは、だしの味と、練り製品の旨味が合わさって、深みのある味わいを作ります。練り製品の旨味はどんな味付けにも合うので、いろいろなバリエーションが楽しめます。
先日、韓国へ行きましたが、おでんは人気で、屋台に若い人たちがたくさん集まって食べていました。私が立ち寄った屋台では、種ものはすじと竹輪に似ている2種類の練り製品で、串にささっていて、紙コップにまるごとのカニでだしをとった汁と一緒に入れてくれます。コチュジャンのような辛いタレが何種類かあって、つけながらいただきます。特に、汁が好まれているようで、日本でも人気のペ・ヨンジュンさんが、ドラマの中でおでんの汁を肴にお酒を飲むシーンがありました。コクのある澄んだ汁で、唐辛子がたっぷり散らしてあって辛いのですが、とてもおいしかったですよ。
今回の「韓国風チゲおでん」はそこからヒントを得ました。コチュジャンなど、韓国のピリ辛味と魚貝類はとても合うので、練り製品をたっぷり入れています。
練り製品は、タイ風にナンプラーやスウィートチリソースで味付けしてもおいしいですし、チーズとも相性ぴったりなので、おでんは他にもエスニック風や、洋風の味わいにするのも一興です。
「カラフル串おでん ディップ添え」では、ナンプラー風味のタイ風、ピーナッツバターを使ったインドネシア風、ブルーチーズ入りの洋風ディップを用意しました。どの種ものとどのディップが合うか、話題が広がりますよ。おでんと合う、オリジナルのディップを作るのも楽しいですね。
このように、おでんは、ひと工夫するだけでおしゃれなメニューになります。いつものおでんの種ものを串に刺すだけでも、見た目が華やかになりますし、食べやすく、大人数のパーティにも向きます。かんずりや柚子こしょう、さらしねぎ、すり胡麻などの薬味を用意すれば、おもてなしメニューに変身します。
種ものや味付けを変えて、いろいろなアレンジおでんにチャレンジし、我が家流おでんのレパートリーを増やしてみてはいかかでしょう。
関東風、関西風、名古屋風味噌煮込みの代表的な3つのおでんと、家庭で簡単にできる野菜おでんのレシピです。
| おでん名称 |
作り方 |
種もの |
| 関東風おでん |
だし2000cc、醤油大さじ3、酒大さじ3、みりん大さじ3、塩小さじ1を鍋に合わせ、下ゆでした大根とじゃがいも、おでん種を入れ、弱火で煮込む。 |
大根、はんぺん、ちくわぶ、焼ちくわ、ごぼう巻、つみれ、白滝、じゃがいも |
| 関西風おでん |
だし2000cc、昆布10cm、淡口醤油大さじ2、みりん大さじ3、塩小さじ1を鍋に合わせ、下ゆでした大根やじゃがいも、おでん種を入れ、弱火で煮込む。 |
大根、牛すじ、餅入り巾着、信田巻、じゃがいも、ごぼう天、さえずり、コロ、里芋等 |
名古屋風 味噌煮込みおでん |
水600ccに八丁味噌100g、砂糖60gを合わせ、下ゆでした大根やこんにゃく、おでん種を入れて弱火で煮込む。 |
大根、豚もつ、角麩、玉子、こんにゃく、さつま揚、焼豆腐等 |
野菜おでん (だしの風味は 京都風) |
だし2000cc、淡口醤油大さじ1、みりん大さじ1、塩小さじ1・1/2を鍋に合わせ、下ゆでした聖護院大根とおでん種を弱火で煮る。 |
聖護院大根、ひりょうず、聖護院大根、ひりょうず、麩、筍、せり、たこ、きのこ、油揚げ、等
トマト、ブロッコリー、さつまいも、パプリカ、玉ねぎ等もおいしいです。 |
このお話は渡辺あきこ先生へのインタビューをまとめたものです。
報道用資料 2005年発行「紀文鍋白書」より *インタビュー内の栄養成分の表記等は、各報道用資料発行当時の公表数値に基づきます。
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