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紀文の季節;鍋、おでん、豆乳鍋の知識を満載

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なべ;冬はやっぱりお鍋でしょう。山海の幸に恵まれた日本では、各地に自慢のお鍋があるのです。

もうひとつの鍋「小鍋立て」のご提案

プロフィール

渡辺あきこさん渡辺あきこ(わたなべ あきこ)

料理研究家。東京生まれ。
土井料理学校で学び、1985年より、フリーの料理研究家として活躍。和風を基本とした、家庭料理の奥義を追求している。「きょうの料理」、「オレンジページ」などテレビ、雑誌で活躍中。著書に「ヘルシースープが飲みたい」(パルコ出版)など多数。最新刊は「あ、おいしい」「わ、かんたん」(オレンジページ)

「家庭における小鍋のコツ」

その1 材料の種類を少なくすること
仕事に家庭にと忙しい今の女性は、食事の準備にばかり時間をかけてはいられません。これは、私の主婦としての実感です。毎日の家庭料理は、どこで手を抜くかが決め手となります。短時間で作れる、調理が簡単、と様々な要素がありますが、いちばん大きなポイントは、使う材料の種類を少なくすること。だから、家庭料理を提案するときは、材料の数が少ない料理をと心がけています。4種類の材料で作る1つの料理よりは、2種類の材料で作る料理を2つ知っている方が、家庭では役に立ちますから。鍋料理でも、寄せ鍋などは家庭でやろうとすると、材料を用意するだけでたいへん。それよりは、2〜3種類の材料でできる鍋−小鍋立て−をいくつか知っている方が、食卓にひんぱんに登場させられます。

その2 小鍋立て 組み合わせはセンス次第
「小鍋立て」というと池波正太郎の世界みたいで、ちょっとしゃれた感じがします。こういうものは、大きなお鍋では格好つきません。小さな土鍋の中で少ない素材をいかに相性よく組み合わせるかは、作る人のセンスがでます。あさりと白菜、豚肉とほうれん草など、おいしい相性を探すのは楽しいこと。基本的には、肉や魚、貝などのだしになるものと 、白菜などの野菜や豆腐、春雨など、 その汁を含むとおいしいもの の組み合わせがよいでしょう。ちくわや蒲鉾などの練り製品も魚のおいしいだしがでますので、気軽に利用するとよいと思います。
また、入れる具の切り方一つで、違う鍋料理になります。例えば、白菜を普通はそぎ切りにします。これを4〜5分煮ると柔らかくなっておいしいのですが、千切りにするとさっとつゆの中を泳がせただけでも、しゃきしゃきとした歯触りでおいしく食べられます。魚や貝のだしのでたおつゆの中で、白菜だけでなく、春菊やニラ、ほうれん草、キノコなどの野菜をさっと泳がせて、温かいおひたしの感覚で食べたらいかがでしょう。これは、小鍋立てならではの食べ方です。

その3 たれ、薬味、つゆの楽しみ
鍋の楽しいところは、同じ材料でも、たれや薬味、つゆでまったくちがう味にできる点。ぽん酢、ごまだれ、おろししょうが、ユズコショウ、七味唐辛子、味噌仕立て、おすまし仕立て、キムチ仕立て…といろいろな要素があります。だから、家族の年齢層が違ってもみんながそれぞれおいしく食べられます。例えば、鰹ベースの薄味のつゆにトリのひき肉のタネを落として、さっと煮ながら食べる小鍋を用意します。お父さんは酒の肴に薬味をきかせて、赤ちゃんには取り分けて離乳食に使えます。こういう食べ方ができるのは、鍋ならではです。

その4 お惣菜感覚の鍋を
火にかけて調理しながら、煮えばなを食べるのが小鍋立ての条件ですが、ときには、食べる直前にキッチンでサッと火を通して、テーブルに運んで食べるやり方でもいいと思います。これなら、温かいおかずの一品として手軽に用意できますし、小鍋立ての気分も味わえます。盛り映えもするので、簡単なものでも豪華に見えます。小さな鍋があって、ほかに一、二品、常備菜があれば、充分ご飯の献立になります。汁物やおかずの一品の感覚で、普段の食卓に取り入れることをお勧めします。
保温性という点で、土鍋はすぐれ物。寒いときは“アツアツ”というだけでごちそうになります。冬は器に盛りつけるだけで料理が冷めてしまいますが、一度温まった土鍋なら、しばらくは温かさを保ちます。また、小さな土鍋は調理器具と食器の両方に使えるので、小鍋立てだけでなく、様々な用途に使えます。人数分揃えておくと便利です。家族の食事時間がまちまちでも、その都度、温かいものを一人分ずつ、出してあげられます。小さな土鍋は、上手に活用していきたいものです。(談)
エスニックの風味を取り入れるなど、味の冒険もできます。

「小鍋たて」について(紀文編集部)

鍋料理の良さは、大勢でわいわいとひとつの鍋を囲むということです。鍋とは元来、囲炉裏端で囲んでいたものですから、日常の食事だったのです。しかし、今、私たちの食生活は「個食化」に向かっているといわれ、鍋料理は週末型のごちそうメニューとなってきています。
大勢でにぎやかに囲む鍋、これが鍋料理のひとつの典型です。しかし、その一方で、1〜2人のための「小鍋立て」という食べ方もあります。これは、粋な江戸っ子の酒の肴であり、小腹がすいたときの簡単な食事でした。作家の池波正太郎さんは、「小鍋立て」について次のように語っています。
「粋な食べものといえば、〔小鍋だて〕だね。江戸の末期には確かにあったんだけど、鬼平の頃はどうかなあ。まあ、あってもおかしくない。〔小鍋だて〕というのは一人か二人で食べるものなんだよ。まず差し向かいでやるのが一番いい。材料は余りものでも何でもいいわけです。あるものを何でも材料にできる。出汁だしを小鍋に張って、そこへ入れて煮ながら食べるんだから。非常に親密な感じになるわけですよ、雰囲気として。小鍋だから大勢じゃできない。入れるそばから引き上げて食べる。だから、ぐたぐた煮るような材料は駄目ということになるね。鍋はむろん土鍋です。」(佐藤隆介編「池波正太郎・鬼平料理長」(文春文庫))
「小鍋立て」は鍋同様、とても手軽です。材料の準備さえすれば、あとは、火にかけて調理しながら食べられるのですから。しかも野菜をたくさん食べられるので栄養バランスがよく、とてもヘルシーです。材料や味付けに決まりはなく、季節のものにサッと火を通すという素材の持ち味を生かした食べ方が約束事となっているぐらいです。江戸っ子に「粋」とされたのもそのためです。
この「小鍋立て」を江戸の先人にならって、「個食化」といわれている現代の私たちの生活に、取り入れてみたらいかがしょう。寒い冬の日、お父さんの遅い夕食や、塾帰りの子どもの夜食、一人暮らしの若者や子どもが独立したご夫婦の夕食など、様々な場面に「小鍋立て」の出番はありそうです。ヘルシーでしかも準備が簡単という点では、仕事に家事にと忙しい女性の強い味方にもなってくれそうです。また、少人数の小さな鍋だからこそ、エスニックの風味を取り入れるなど、味の冒険もできます。

報道用資料 1997年発行「紀文鍋白書」より
*インタビュー内の栄養成分の表記等は、各報道用資料発行当時の公表数値に基づきます。

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