なべ;冬はやっぱりお鍋でしょう。山海の幸に恵まれた日本では、各地に自慢のお鍋があるのです。


鍋の形
●基本形は浅くて広い口
鍋料理の基本的な鍋の形は「浅くて口の広いもの」。さまざまな材料がひと目でわかり、取りやすいからです。底は、適度に丸みがあって、卓上コンロの上での安定性も大切。この形の土鍋が1つあればほとんどの鍋料理が楽しめますが、さすがに鍋料理王国、日本。
それぞれの鍋の特長に合わせた使いやすい鍋も出揃っています。
さまざまな専用鍋
基本の土鍋の他に、ぜひとも用意したいのが、鉄鋳物の「すき焼き鍋」。形は肉を広げて焼きやすいように平らです。
何種類もの具をそれぞれ煮るのに最適なのは「おでん鍋」。鍋の中にしきりがついているので、具をきれいに分けて並べることができます。仕切りは大抵取り外しできるので、大きめで、扱いやすいアルミ性のものなどを用意しておけば、他の鍋ものにも活用できそうです。
浅くて口の広い「ちり鍋」。さっと火を通せばOKのちり鍋に最適な形です。
また、うどんすき用の鍋といえば、底が丸くて、うどんが取り分けやすいよう、ふちが平らになっているのが特長です。
しゃぶしゃぶには、湯の温度が下がりにくい「火鍋」が本格的。
専用鍋は、使いやすさもさることながら、何といってもその場の雰囲気を盛り上げてくれることが魅力的。全部、とまでは行かなくとも、家族の好物のものは揃えておくと、だんらんの時間がより充実しそうです。
鍋の素材
●土
土鍋は素焼きに柚薬をかけた荒陶製の鍋。食卓に上る鍋としては最もポピュラーです。
保温力が高いので、コトコト煮ながらつつく料理にはぴったりです。火のあたりがやわらかく、肉や野菜の旨みを損ないません。
そして何より素朴な風合いと土味があたたかく、日本の鍋物にはかかせない、冬の風物詩です。バブル崩壊以降、「家で食事をする」楽しさ、大切さが見直される中で、この土鍋は目だって売上を伸ばしています。産地は三重県の四日市市が有名。四日市の萬古焼の特長は何と言っても丈夫なこと。昭和30年代に「ペタライト」という混入剤が開発され、これを土に混ぜた耐熱陶土で土鍋を作るようになってから、評価は一気に高まりました。
どちらかと言えばきめ細かい仕上りの萬古焼に対し、あくまでも素朴さを残しているのは、伊賀焼きや信楽焼き。見た目に美しい土鍋が人気を呼んでいます。
はじめて土鍋を使う前には、おかゆを炊いたり、鍋に小麦粉を混ぜた水を張って、10分ほど弱火にかけるとよい、などとよく言われますが、これは米や小麦粉の粘りが土肌にしみ込み、ひび割れを防いでくれるからです。
●金属
土鍋と並んで、昔から日本人がなじんできた鍋。アルミや合金もありますが、中心となるのは鉄鍋です。特に岩手県名産の南部砂鉄の鍋は、厚手で火の回りが安定しているので、すき焼きには最適。熱伝導率や畜熱性が高く、油がよくなじむのが魅力です。また、電磁調理器に使えるのもうれしいところです。
土鍋のように壊れる心配はありませんが、さびる恐れがあるので、洗った後は水分をよく取っておくことが大切です。
最近では、身体に必要な鉄分が含まれているので、鉄鍋が見直されています。
●石
日本ではあまり一般的ではありませんが、中国や韓国では、数百年の歴史を持っています。原石は角閃石(かくせんせき)と呼ばれる石で、粉の鍋で調理すると、栄養を逃さず、風味豊かな味わいが生まれると言われています。その理由は、抜群の保温性と均一な熱伝導率に加えて、遠赤外線の効果があるからです。
●その他
電子レンジやオーブンに使える耐熱ガラス製の鍋、金属にほうろう加工(ガラス質のエナメルを表面に焼きつける)した鍋など。ほうろう加工の鍋はアクが出ないので長く煮こむには最適。おでん鍋などにもしばしば使われます。
変わったところでは和紙で作る「紙鍋」。材料から出るアクを吸い取って、繊細な味の楽しめるとのこと。家庭ではなかなか真似できませんが、有名割烹などの名物鍋になっています。
◆参考文献 〈順不同〉
- 石井郁子「食べもの歴史ばなし」(柴田書店)
- 小柳輝一「たべもの博物誌」(新人物往来社)
- 鈴木晋一「たべもの史話」(平凡社)
- 「おすすめ鍋もの」(婦人生活社)
- 「鍋料理」(中央公論社)
- 「日本料理由来事典」(同朋社)
- 「dancyu」(プレジデント社)
- 石毛直道他「食物誌」(中央公論社)
- 半藤一利「大相撲こてんごてん」(文藝春秋社)
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