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【鍋料理】教室 基礎

さまざまな鍋料理の種類

鍋料理を大きく分類すると3つのタイプに分かれます。1つ目は「水煮タイプ」。湯豆腐などが有名です。2つ目が「薄味で煮るタイプ」。おでんなどがまさしく代表選手と言えるでしょう。そして最後は「濃い味で煮るタイプ」。ついごはんが進む、すき焼きなどです。

さまざまな鍋料理の種類

鍋料理3タイプ

鍋ものの種類は汁の状態によって、大きく3タイプに分けられます。

水煮タイプ水煮タイプ
「ちり鍋」や「水炊き」など。水またはだしで煮て、取り分けてから味をつける。
薄味で煮るタイプ薄味で煮るタイプ
「おでん」や「寄せ鍋」など。薄味で煮て、煮汁も一緒に楽しむ。
濃い味で煮るタイプ濃い味で煮るタイプ
「すき焼き」など。汁気を少なくし、濃い味で煮る。

これらはとくに、どの時代にどのタイプが流行ったというものではないようです。炊事場ではどれも古くから行われてきた調理法であり、それぞれが独立して「鍋もの」に伝えられたものだと思われます。

水煮タイプ

湯豆腐

豆腐はさまざまな鍋ものにつきものですが、湯豆腐は純粋に、豆腐そのもののおいしさを満喫するためのもの。鍋ものと言えばワイワイと楽しむことが多いものですが、湯豆腐だけはしっとり落ち着いた雰囲気のなかで静かに味わいたいという人が多いのではないでしょうか。

湯豆腐料理としての歴史はかなり古く、『日葡辞書』(1603〜1604年)に「Yudofu(ユダウフ)/ソースをつけて食べる、薄く切った豆腐料理のひとつ」という訳が記されています。

江戸時代の豆腐料理の書『豆腐百珍』(1782年)では湯豆腐を「京都では湯とうふ、おほさか浪華では湯やっこと呼ぶ」と紹介しており、『守貞謾稿』(1837年)には「京都南禅寺前の湯豆腐も名物也」との一節があって、京都地方の伝統料理であることがうかがえます。その「はんなりと、上品な京料理」のイメージが現在まで残されているようです。

ちり鍋

ちり鍋は、新鮮な白身魚が決め手。新しい魚の切り身は煮るとちりちりと縮まることからこの名がつきました。「魚を豆腐や野菜と共に水煮する」料理は、古来から中国・四国地方で行われてきましたが、鍋ものとして東京で流行したのは、やはり江戸末期。

鱈ちり、鯛ちり、河豚ちりと用いる魚の名をつけて呼ばれますが、河豚ちりは、当れば死ぬという洒落を込めて、鉄砲ちり〜転じて「てっちり」などとも呼ばれます。また魚だけでなく、豚ちり(毎晩食べても飽きないことから“常夜鍋”とも呼ばれる)、鶏ちりなども広まっています。

現在では具材に関わらず、水煮タイプのものを「ちり」と呼ぶようになってきています。この「ちり」タイプの鍋ものは、なんといっても各人がお皿の上で、自由に味つけを加減できることが魅力です。

水炊き

鶏をだし汁で煮た「水炊き」はすっかり全国的な料理になっていますが、もともと別名「博多煮」とも言われる福岡の郷土料理です。明治時代、九州横断鉄道の開通に伴って、薩摩鶏などの地鶏が博多に集められ、それに中国風の調理技術を加えたものがはじまりとか。正式な食べ方は、まず、スープに塩味をつけて味わい、次に煮込んだ鶏肉をつけ汁で食べ、その後、野菜・もち・豆腐を煮ながら食べ、残ったスープで雑炊を作って締めくくるというもの。博多の郷土料理店などではこの食べ方のなごりが今も残っています。

薄味で煮るタイプ

おでん

田楽おでん柔らかく煮えたちくわやさつま揚、ぷっくり膨れたはんぺん、とろけるようなちくわぶ……好きな種ものを取り合うのも、熱燗でのんびり一人つまむのも楽しいおでん。

元祖は豆腐やこんにゃく、いもを串に刺し、みそをつけて焼いた「田楽(でんがく)」。おでんそれがいつごろ今のスタイルになったのか定かではありませんが、明治時代に上演された、河竹黙阿弥の芝居に「煮込みおでん」が登場することなどから察して、やはり江戸末期頃と思われます。

一方、大阪に初めて煮込みおでんの店が誕生したのも、やはり江戸末期のこと。こちらは味噌おでんと区別して「関東煮」の名で繁盛したとか。そのなごりか、関西地方では今もおでんを「関東煮」と呼んでいます。

ちゃんこ鍋

相撲界でちゃんこと言えば「食事」のこと。部屋ごとに伝統色の濃い料理として知られていましたが、近年は、引退する力士が経営する店を筆頭に、ちゃんこ料理屋が増えはじめました。太る食べものと思われがちですが、実際は野菜たっぷりでヘルシーです。

はじまりはやはり江戸時代。名の由来は、長崎に巡業した力士が中華鍋の「チャンクォ(ちなみにクォは鍋の意)」の料理法を取り入れたことから、という説が有力。他方では、父(チャン)と子(コ)で食べる料理だからとも、はたまた相撲部屋の料理人を「ちゃん」と呼んだことからとも言われています。

ちゃんこ鍋本来のちゃんこ鍋は、主役の魚介または鶏肉に、野菜などを取り合わせたもの。四足の獣肉は「四つんばい」を嫌って使わなかったとか。調理法は、水炊きしたものに酢醤油を添える「水炊き」、だし汁に味をつけ、汁ごと食べる「ソップ炊き」の2種類。ちなみにソップとは鶏ガラのスープのこと。“スープ”をどこかで聞き間違えたことから生まれた言葉のようです。

今では味つけや具材の決まりはなくなり、相撲部屋では「ちゃんこ番」と呼ばれる下位の力士が、さまざまに工夫して味のバリエーションを増やしています。家庭でよりヘルシーに楽しむには、魚や肉の代わりに練りものやつくねなどを入れて楽しむのもよいものです。

濃い味で煮るタイプ

すき焼き

「スキヤキ」はもはや立派な国際料理。それを意識してか、比較的経済的なほかの鍋ものに比べ、日本人にとってすき焼きは「特別のごちそう」。牛肉それも極上のものを奮発して、そのまろやかな舌ざわりを楽しみます。

かつて日本では、獣肉は汚れ多きものとして、屋内で、しかも日常使っている鍋で料理することを禁じられていました。けれどやはりうまいものは食べたい。そこで江戸時代、農耕用の鋤(すき)を鍋代わりにして肉を焼いたのが「すき焼き」のはじまりと言われています。

ただし、それも肉は薬になるからなどと言いわけをつけて食べており、あまりおおっぴらにできるものではなかったようです。それが江戸幕府の崩壊とともに一気に解禁。次から次へと「牛鍋屋」が立ち並びはじめました。

すきやき牛肉のあまりのおいしさに、両頬を押さえていないと、横浜市内から本牧まで飛んでいってしまいそう、という牛鍋礼賛も。表面上、肉食を絶っていた日本人にとって、それはまさに「文明開化の味」だったのでしょう。

ところで、すき焼きは割下で煮る関東風、肉をあぶりながら調味する関西風と、東西で調理法が異なるのも特徴。関東地方では鍋ものとして流行した明治の「牛鍋」を、関西では鋤で焼いていた原形の「鋤焼」を引き継いでいるようです。