四季のおでん

- プロフィール
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野崎 洋光(のざき・ひろみつ)さん
1953年福島県石川郡生まれ。武蔵野栄養専門学校を卒業後、東京グランドホテルの和食部に入社。5年の修行を経て、八芳園入社。1980年東京・西麻布「とく山」の料理長に就任。1989年に「分とく山」を開店し、総料理長となる。「素材の味を食べる」(祥伝社)、「野菜パワー」(健学社)、「和食の設計図」(講談社)など著書多数。
練り製品は日本人の知恵の結晶。調理はシンプルに
おでんはとにかく時間をかけて煮込むという先入観が、多くの方にあるようで、家庭のおでんが「ごった煮」のようになっているのは残念です。
そもそも練り製品は、日本料理の華である「しんじょう」に近い、海の幸を慈しんできた日本人の知恵の結晶です。板前が手間をかけ、季節を盛り込む「しんじょう」は、家庭ではなかなか真似のできない料理ですが、おでんなら、作り手の心一つで手軽に美味しい日本料理になります。
そこで最も大切なのは、はんぺんやつみれ、さつま揚等、食材一つ一つが持つ味わいを大切に、その美味しさをシンプルに生かすこと。練り製品は完成された食材なので、時間をかけて煮込む必要はありません。グツグツと長く煮込めば各々の食材の旨味がぶつかり合い、味が複雑になり、食材そのものの微妙な味わいや食感も失われます。
食べ頃の旬”生かす「春夏秋冬のおでん」
「春夏秋冬のおでん」は、現代の食生活に叶う試みだと思います。それは、日本の風土に根ざした、魚が主役の健康に良い献立であること、調理が手軽であるという二つの理由からです。
おでんはもともと、茶屋料理の豆腐の味噌田楽がルーツで、江戸時代の終わりに醤油で煮込む今のスタイルになりました。調理法が「焼く」から「煮る」に変わったことで、練り製品をはじめ、こんにゃくや大根等、食材の幅が広がったのです。気軽に身近な食材と楽しむのが本来ですから、季節の野菜やきのこ、海藻等、もっと自由に楽しめます。
美味しい「旬おでん」作りのコツは、"食べ頃の旬"を逃さないこと。"食べ頃の旬"とは、季節の食材と共に、最も美味しいタイミングでいただくということです。
コツはそれぞれの材料を霜降りしてから鍋に入れること。霜降るとは、さっと湯通しすることで、日本料理の基本の技法。余分な油分を取るだけでなく、食材の雑味を取り除き、旨味を閉じ込めます。つまり、まずお風呂に入れてから調理をするということで、素直に味が馴染む下地を作ります。だしに練り製品を入れたら、煮すぎないこと。下煮した野菜類も、練り製品の旨みがほのかに溶け出した汁で温める程度で十分です。
見直したい食べることの大切さと日本の伝統
今回、心掛けたのは、おでんならではの風格を携えながら旬を表現すること。食材それぞれの味を引き立てることを第一に作りました。
創作にあたって感じたのは、おでんが"そしょく素食"であること。"素"は素直、素肌という言葉と同じで、「ありのまま」の意。だしをベースに様々な調味料を加減して作るというイメージの日本料理は、家庭では難しいと、近ごろは敬遠されがちですが、本来は素材の味を生かすことが基本のシンプルな料理です。その意味でおでんは、簡単な調理で初心者にも失敗なくできる、和食の基本です。
おでんは暮らしの中で生まれた庶民の食だから、数百年も食べ継がれてきました。「旬おでん」は、おでんを高級料理にしようというものではなく、あくまで家庭で出来る旬の味の提案です。素材のありのままのすっきりとした美味しさを引き出してください。
滋養豊かな季節の食は、食べる喜びを感じさせてくれるだけでなく、日本の風土に生きる私たちの生理代謝と合って身体を養います。風土と歴史に培われた日本料理は私たちの大切な遺産。家庭でも旬の料理を通して、日本の伝統を次代に伝えて欲しいと思います。
報道用資料 2006年発行「紀文・四季のおでん」より *インタビュー内の栄養成分の表記等は、各報道用資料発行当時の公表数値に基づきます。
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